このようなウイルスはHIVと同じ科のウイルスに属し、彼ら自身の遺伝物質を宿主細胞の染色体のなかへ挿入して正常なDNAとともに遺伝される。
このため、彼らウイルスを取り除くことは、たとえ不可能ではないにしても、大変に難しいのである。
一九九七年、イギリスの科学者たちは、正常なブタの細胞から放たれたブタのレトロウイルスがヒトの細胞に感染しうることを発見し、体内においてこれらのウイルスが移植臓器から被移植者の細胞へとジャンプできることを示した。
ほどなくして私たちは、新しい流行病をかかえ込むことになるかもしれない。
このような結果にかんがみて、数か国の政府は、ブタのウイルスが人間に感染する潜在性についての知識が増えるまで、臓器提供者としてのブタの使用を禁止することを決定した。
しかしながら、過去には、絶望的な状況にある人たちを救うためにブタが使用されていた。
たとえば、いく人かの人たちは透析装置の代わりにブタの腎臓に一時的に取りつけられていたし、またブタの組織が実験的に人間に使用されていた(糖尿病の治療のためのランゲルハンス細胞の島、パーキンソン病やハンチントン舞踏病を治療するための脳細胞など)。
これらの人たちがブタのウイルスに感染しているかどうか検査されたときには何も見つからなかった。
現在、こうした楽観的な雰囲気が支配的であり、また欧州会議がブタ移植臓器に関する世界的な一時的使用禁止を要求したちょうどそのときでもあるので、科学者たちの多くは、リスクを評価したうえで、今後の方向を見定めるための限定的で注意深く監視された臨床実験ならば正当化されるであろう、と感じている。
さもなければ、世界のどこかで商業的関心から、監視不十分な実験が行われ、大きな災害を招く危険が現実にあるのである。
結局、もしこれが成功すれば、ブタの移植臓器は年間六0億ドルのビジネスになるであろうと営利企業では推定している。
有害動物の駆除か、混乱の拡大か?これまでここにおいて述べた流行病はどれも、何らかの形で、知らずであれ偶然であれ、人為的に引き起こされたものであった。
しかし、折にふれて、私たちは、疫病を制御するためにウイルスを故意に放っているのである。
生物学的な制御因子として、ウイルスが最初に使用された最も有名な例は、一九五0年にイギリスとオーストラリアで実施されたものである。
両国で増えすぎたウサギを抑えるために、ブラジルのウサギに自然感染している粘液腫症ウイルスというウイルスが放たれた。
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